ジャックナイフの憂鬱(その2)
Posted at 08/01/31 PermaLink»
21世紀最初の春、Jはバイク事故を起こした。僕がそのことを知ったのは、事故が起こってから何日も後のことだった。Jの事故の話題は、テレビでもあまり大きく報じられていなかった。その数年前に起こった、足立区出身の国民的大物芸人のバイク事故のときとは比べものにならない。Jの容体はどうなのか、現場に復帰できるのかどうか、たしかなことは何もわからなかった。
僕は、人間としてのJの安否についてはあまり心配していなかった。それはJの家族や友人知人が考えればいいことだ。僕にとって重要なのは、芸人としてのJが無事であるかどうかだ。事故の影響で、顔面が見るも無残に歪んでいたら? 芸人としての発想力、瞬発力に衰えが見られたら? なんらかの不運が重なれば、Jはそのまま芸人生命を終えてしまう可能性があった。
テレビでは誰もJの話などしていない。悲しいほどに今、世界はJを中心に回っていない。大阪時代のあの熱狂はどこへ行ったのだろう。強い逆風がJを押し流していた。21世紀の芸能界に、Jが座るための椅子はまだ残されているのだろうか。
(つづく)