ジャックナイフの憂鬱(その1)
Posted at 08/01/28 PermaLink»
Jはあの頃の僕のスターだった。Jの見せてくれた世界は、他のどんなお笑い芸人とも全然違っていた。なんというか、きらきら輝いていた。天性のスターとして生まれてきた男。繊細で、攻撃的で、それでいて、どこか率直なところがある。大したことを言っているわけじゃないんだ。彼はただ、おもしろい話をしているだけなんだ。でも、他のどんな芸人と同じ舞台に立っていても、彼のオーラが圧倒的に場を支配していた。そんな時代がたしかにあった。
あの頃の僕はアホだったので、すぐにJの影響を受けた。もろに受けた。友達におもしろい話をするときの口調は、Jのしゃべり方そっくりになった。「なんでそんなしゃべり方なの?」とある友達に言われた。だって、その方がかっこいいんだもの。
Jは東京に行っても間違いなく売れるだろうと言われていた。僕も、みんなも、J本人もきっとそう思っていた。でも、なぜかJは東京では売れなかった。東京の番組で初めてJを見たとき、「なぜ?」と思った。これは、変だ。あのJが、まるで、ただの一関西芸人みたいに見えた。何かが少しずつ変わり始めていた。
(つづく)