増田晶文『吉本興業の正体』
Posted at 07/04/13 PermaLink»
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増田晶文『吉本興業の正体』。島田洋七と中田カウスの件で吉本興業周辺が揺れているこの時期に、たまたまこんな本が出たらそりゃもう読むしかないでしょう。特におもしろかった箇所をいくつか引用しましょう。
中田カウスの言葉。プロの芸人とは何か?
「プロの世界にいるくせに、ずっとアマチュアのままのも意外と多いんです。だけど、アマが趣味を突き詰め、結果としてチャンピオンになれたら大したもんじゃないですか。それはそれで認めてやるべきです。けどプロを目指すのなら、芸人になりたいんなら、たとえM-1で勝っても、やったあ、なんて錯覚せんことです。セックスと同じでね、いってしまうとその瞬間にすべてが終わってしまうんです。芸みたいなもん、終わりがあるはずないんやし、終わってしまってええもんやないんですから。芸人の世界では、勝ち負けが何度も繰り返されて、最後の最後に勝った者が勝者なんです。一生漫才を続けられた者、舞台で死ねた者が本当の芸人です」
吉本興業の大崎洋の言葉。テレビ芸の天才・明石家さんまのすごさとは?
「さんまはテレビの持っている特質をすべて把握しています。テレビは何でも呑みこんでくれますが、その代わり吐き出してしまうのも早い。それに芸の上手下手より見た目のイメージを大事にします。テレビは恐いメディアなんです」
フジテレビの吉田正樹の言葉。明石家さんまとダウンタウンの非大阪的な感性について。
「さんまさんって反逆者じゃないんですよ。正しくて、美しくて、優れたものを率直に認めますよね。メジャーなものが素直に大好きなんです。これは大阪的な根性じゃありません。大阪人は東京発のメジャーなものを認めたがらないでしょう。あんなもん、なんぼのもんじゃいってすぐに否定にかかる。だけど、さんまさんに大阪人の痩せた根性、マイナー志向は全然ないんです」
「ダウンタウンはもっといじわるなんです。天才というより、僕は経済合理性をもったビジネスマンという見方をしています。つまり、何が商品としての価値を持つかをちゃんと見極めているんです。そのバックボーンは、もちろん彼らが持っている類まれな才能の力ですけどね」
日本テレビの菅賢治。自分はお笑い番組を作っている、という確固たる自負。
「僕はバラエティ番組をつくったことはありません。ダウンタウンと組んだ番組はすべてお笑い番組です。お笑い番組に出られるのは芸人だけです。タレントは出る幕ないんです」
ソフトバンクよりも吉本興業の方が恐い、という話。
「例えば孫正義さんが攻めてきても、正直そんなに恐くないですね。けど吉本は手強いですよ。だって孫さんなら、ソフトをテレビ側につくってくれって発注しそうですもん。けれど吉本は違う。この会社は実に質の高いソフトをつくれる。通信にまつわるハードウエアや環境がテレビと対等になったとき、吉本の持つソフトづくりの実力は最高の武器になっているはずです」
その他にも、過去の吉本興業のヤクザがらみの事件の顛末とか、松本人志のベストセラー本『遺書』の印税交渉の話とか、エンタメ制作の上流から下流までをがっちりおさえて未来へと突き進む吉本興業という会社の壮大な野心とか、見どころ満載のルポルタージュ。今起こっている吉本お家騒動の参考資料としても最適です。